第三回からニヶ月、佐藤司さんが担当となり新体制で臨む
最初の回となる、第四回シナリオクロスレビューをお送りします。
今回のお題となるシナリオは、先日発表のあった
第五回シナリオグランプリオリジナル部門一位、
グランプリ・裏グランプリで二位に入った
風雲再起不能さん作の『送還直前即興曲R』です。
それでは、レビュアー紹介です。
いつもの事ですが、一部の方はペンネームとなっています。
前もって書かせていただきますと、
今回は事前に以下の点を念頭にレビューをするよう
各レビュアーには連絡をしてあります。
それでは、どうぞ。
最後まで終えて、この作品に対して感じたのはアルクとユウという2人の物語を描き切った作品であったということである。
ある事情で異世界に召還された主人公が、元の世界に帰る方法を探すうちに、その世界全体の命運を賭けた戦いに巻き込まれていく。
こういった形でストーリー展開を抜き出せば、よく言えば王道だが、ともすればありきりたりでオリジナリティが薄いとも言えるものである。
しかし、このシナリオではライトノベル的でプレーヤによって好き嫌いが分かれそうな部分だが、2人の軽快な掛け合いによる会話などはこのシナリオならではの魅力となっており、ストーリー的にもむしろアルクとユウの2人の物語こそがメインである。
ストーリー構成を見ると、序盤は異世界の世界観や用語、現在の状況などの説明がメインであり、説明自体はくどすぎることもなく、世界観を受け入れられた。
ただし、異世界のはずなのに言葉が問題なく通用する理由等の描写が無かったり、異世界の人間が日本の故事成語を口にしたりするあたりは若干の違和感があった。
また、状況説明は丁寧なものの、その分話の展開は遅く、メイン2人の掛け合い以外にプレーヤーを引きつけられる要素が薄く感じられた。キャラクターの性格が肌に合わないプレーヤーに対しては、ストーリーでプレイを継続させる魅力にやや欠けるように思える。
中盤で、敵勢力が見えだした辺りからは、ストーリーも大きく動き出し、断片的に掲示されるアルクの過去に関する情報等とあわせて、先を知りたいと思わせる展開になっていく。ここで好感度によるルート分岐があるが、基本的にアルクとユウの立ち位置が入れ替わるだけでストーリー的な変化はほとんど無いため、以下は特に分岐のことは触れずに書く。
そして12話においてこのシナリオ最大の山場を迎える。展開自体はまさに王道といえるものだがここまで積み重ねて来られた二人の描写があるからこそ、アルクとユウの二人がお互いに影響を及ぼし合って変わって来たということが感じられ、説得時の台詞が重みを持ってくる。
ただし、ここで大きく盛り上がって二人の関係がほぼ完成しきってしまった結果これ以降の展開においてアルクとユウの関係性という本来の焦点から外れストーリーのピントがぼけてしまったように感じられる。13話でのそれまで内面描写の殆どなかったロウに関する唐突なエピソードの挿入や、終盤でのラスボスの心情描写や抽象的な言葉での問答の繰り返しなどは個別の要素としての出来はともかく、アルクとユウの物語という観点で見れば不要な部分が多かったように感じられた。
ストーリーの本筋がアルクとユウの物語を描くことにあったのならばもっと大胆に削ぎ落とせる部分は削った方がよかったのではないだろうか。
そうした多少気になる部分はあったものの最後の選択肢とそこから導かれるアルクハッピーエンドの内容は、まさにこのアルクとユウの物語を締めくくるものとして、非常に満足の行く清々しいラストだった。
ひとつの物語を描き切って完結した作品として心から賞賛したい。
こんにちは、えすたまです。
気になった点がいくつか……。
設定に関してですが、オリジナルの世界感を出そうとしているのはわかるのですが、六紡均衡など、まず設定ありきの考えで説得力がありません。
なぜ各属性同士がいがみあっているのか、均衡が保たれているのか、作品中の解説では(少なくとも私は)納得いくものではありませんでした。
江戸時代のようなイメージで設定されたのかと思われますが、江戸時代は参勤交代で各大名の経済力を削いだり人質を取ったり、様々な幕府の施策で均衡が保たれていたわけで、そういったリアリティが感じられず、マンガの長期連載作品の妙な後付け設定のようになってしまっています。
作中で「徒歩で2、3日で目的地に着く」というセリフがありますが、同時に出された地図を見ると世界の端から端まで一週間もあれば行けてしまうような気が……。
いくらなんでも狭すぎじゃないでしょうか。
時速4kmほどでしょうから、一日大体10時間移動に費やしても40km。大体100kmほどでしょうか?一都六県より狭いぐらいです。
一つの国だけならばともかく、一つの世界でこんな狭いというのはこれまたリアリティが無いのではないでしょうか。
世界ではなく、この国一国の地図である、という風にしておけばさほど不自然ではないかと思いますが、そうすると今度は地図を見る限り地続きになっている他の国はどうなんだという事になりそうです。
非常に強大な力を持つ魔道士ですが、設定上、一部の人間に生まれながらにして与えられる力となっているので、当然隣国も多少なりとも魔力を持った人間が生まれるはずです。
六紡均衡のような危うげなシステムを持つ国ではすぐに攻め入られてしまいそうなのですが……。
長々と書いてしまいましたが、練り込みが足りねぇって事です。
次にセリフです。
普通、喋り言葉では使わない単語の連発で非常に不自然なところがあります。
『そういう喋り方をする』ことを売りするキャラは1人ぐらいいても良いかもしれませんが、みんながみんなというのはちょっと……。
これは恐らくライターのボキャブラリーが少ないために、上手いセリフ廻しが思いつかなかったせいかと思われます。
ただ、それを除けばステレオタイプな感はありますが、キャラ立ちしていてなかなか良いと思います。
#カムハーンは個人的にかなりお気にいりヽ(*´Д`)ノ
最後に、一番ツッコミたかった点です。
アルクのセリフで『弘法も筆の誤り』ということわざを使っていますが、この世界には弘法大師がいたのでしょうか?
他にも召還直後の主人公が魔法書を普通に読んでいたりします。
思わず「おいおいなんだよコレ(´Д`;)」と言いたくなってしまいます。
ギャグならばともかく、ちゃんとそこらへんのフォローを入れましょう。
エラーも出ないし、アイコンもクオリティ高いし、演出も悪くないと思うし、丁寧に作りこまれていますが、アニメやゲームばかりで得た知識で作られているといった印象の作品でした。
画像や、主人公達登場キャラクターの台詞回し等については他の方が深い考察を述べられていると思いますので、それ以外の点で…
主人公が異世界での戦いに巻き込まれ、そして帰還するまでの戦いがおおまかな流れなのですが、後半のヒロインと敵対勢力との衝突が本格化してきた際、物語や人物描写が足りずに、結果として盛り上がりを大きく欠いてしまっているのではないでしょうか。
後半、ヒロインが過去の不幸を敵に付け込まれる等にあたっては、前半でのキャラクター説明や世界説明とからめた物語の描写がしっかりと伏線になっている点、そうした苦難の最中でも笑いを絶やさず明るく振舞うヒロインと主人公は、確かに物語が佳境に来ている事を明確にする描写ですが、その振舞い方は前半とあまり変わらない為に物語の進展から来る状況の変化という物があまり伝わらないのです。
(既存の他作品で例えるなら、ガンダムの場合は物語の中盤で主人公のアムロが急に大人びてきて、周りの仲間を逆に引っ張っていこうとしたりする。というのがありますが…それに準ずる描写が必要だった、という事です。)
閑話休題、もしこのシナリオでなら、12話での葛藤後、13話冒頭でヒロインが本来のキャラクターを壊さないよう、ほんの一瞬だけの描写で主人公に対していつもとは違う「女性的な一面」を見せる、等のアクションがあれば良かったのではないでしょうか。
先ず主人公とヒロインのユニークな掛け合いが有りき、というのがこのシナリオの主題だとしても、物語が進行し主人公達が大人に成長していく以上はその本質を損なわない程度に抑えつつも<彼らの思想、行動、言動>が少しづつ変化していく事は必然なのです。
三話で投げた。
といっても、ぜんぜんダメなシナリオというわけではない。
このシナリオの売りはストーリーだと思う。なので、それ以外の面についての話を先にしておこう。
可もなく不可もなしだ。
戦闘マップだが、精神コマンドなし、とくになにも考えずに動かしていてもクリアできる。また、特徴的なシステムがあるわけでもない。
苦痛ではないが、かといって売りにもならない。(少なくとも、3話まではだ)
ゲーム性で売るのに難しい必要はないが、考えずに進められたりしてはいけないのだ。ゲームの本質というのは与えられた条件下でなにを選択するか、ということなのだから。
演出は、マップ上でユニットが動いてアクションを見せるくらいで、なにもないと言ってもいい。 ただし演出はゲームにおいてはおまけに過ぎない。不可がつくのは、こった演出に失敗して邪魔なだけの代物になっている場合だ。
なにもないなら、うっとうしくもないわけで、可もなく不可もなくという結論になる。
さて、ストーリー面だ。
おそらくは私がプレイした三話までが導入部だろう。
主要キャラクターの描写、プレイヤーへの引きとなる謎の設定、おおまかなストーリーの方向性の提示、世界観の説明と、導入部としての要件は満たしている。
まぁ、世界観の説明は少々微妙かもしれない。おそらくは重要であり、その後の説明にも関わってくる『六紡魔術』『六紡均衡』の説明を飛ばしてしまう可能性がある。横に『話し相手なら付き合うよ』という選択肢があるからだ。
面倒な世界観の説明に普通は魅力を感じない。ヒロインとの交流という選択肢も並んでいれば、そちらを選ぶプレイヤーは存在するだろう。説明が悪いというよりは、選択肢の設定の仕方が悪いというべきだが。
また、この導入部は『ユウが魔術を使うことを決める』という一つの話として成立している。
部分は部分で起承転結になっていたほうが話にメリハリがつくので好ましいと言える。
それではなぜ投げたのかというと、このシナリオがオリジナルだからだ。
オリジナルと版権シナリオには異なる点がある。
一つは、版権シナリオは原作が存在する、二次創作だという点。『これをこういう風に使ったのか』と感心したり、『原作ではどんな使い方をされているのだろうか』と考えてみたりすることができる。簡単にいうとクロスオーバーによる面白さだ。
オリジナルシナリオにはそれがない。ストーリー単体でそれを上回る面白さを持っていなければならないのだ。
もう一つは、比較対象だ。
クロスオーバーの場合は同人が多くなるだろう。
もちろん、古くはファミコンジャンプやコナミワイワイワールドから、新しくは(?)スパロボやKOF、キングダムハーツなど版権もののクロスオーバー作品は存在する。ゲーム以外ではアニメ版ジャイアントロボなどもあるだろう。
その量は決して多くはないし、どちらかと言えばゲームが多いので比較的割高になる。
SRCがPC用のソフトであり、インターネット上には多くの同人作品がばらまかれていることを考えれば、同人のほうが多いと考えて差し支えないものと思う。だいたい、SRCシナリオこそ同人のクロスオーバー作品の山ではないか。
しかし、オリジナルの比較対象はそうではない。
オリジナルは本屋やゲームショップにでも行けば山のように売っているからだ。
はっきり言って、105円持ってブックオフにでも行けば、もっと面白い『オリジナル作品』は手に入れられるのだ。(もちろん、つまらない作品も数多くあるわけだが、下を見たところで面白さに影響はない)
であれば、それに比べて面白いわけではない作品をプレイする理由がなにかあるだろうか? ……105円すら出せない、出したくないという理由はあるかもしれないが。
私はこのシナリオにそこまでの魅力は感じなかったので、ひとまず三話でプレイを中止した。
途中までなので総括的なことは省くが、それが私のこのシナリオの評価だ。
シナリオ作者相手にして欠点や不備指摘する時は、恥かかせない為にも細かい説明なんか端折りたいとこだけど、読み手を意識した文を書けとも言われているのでまいっちんぐマチコ先生。
まあ、いつもどおりでGoだ、気にしない。
シナリオ展開ですが、中盤意向、新規に出てくるキャラが増える速度に、お話の進行具合が追いついていない印象を受けました。
聖闘士星矢のハーデス編状態と言うべきでしょうか。
オリキャラ物って、プレイしててゲストキャラかどうかの区別ってつかないから、プレイヤーの思い入れの配分が、作者の意図からだんだんずれてくるんです。
主役の周囲で大勢が動く、それは構いませんが、もしこれがユウの物語だと言うつもりならば、もう少し物語の牽引をするのがユウであるべきでしょう。
まあ、脇描くのも楽しいし、最近の漫画コミック等で多く好まれるパターンですから、それはそれで判るんですが、せっかく「未知の異世界に召喚された現代の少年」が、プレイヤーとして「未知のオリキャラ世界に引き込まれたプレイヤー」とシンクロするんですから、この感覚を上手く生かす為にも、脇役の目よりもっと主人公の目からお話しが見たかったです。
で、基本的に今までのレビュー姿勢から、僕が「戦闘メッセ」に大分思い入れがある。ということは予測出来ると思います。出来なくても気にするな。
そんな僕にとっては、致命的なミスと思える部分なんで、ちょっと深めにつつくんですけど。
『
ダメージ大, ちょっと、ユウ! 手伝ってくれてもいいんじゃないの?!
破壊, ごめん、ユウ。.あなたを元の世界に戻せそうにない…
』
1話の時点でこのメッセが出る時点で興ざめ。とだけ言ってわかるかなあ。
やっぱり説明
この台詞、1話内のこの状況では出てきちゃいけませんって。
しかもこの台詞。後のシナリオの展開やら人間関係やらまで微妙に読めてしまうから、
(@ああ、とりあえずしばらくは元の世界に返すつもりはないんだなとか、
Aアルクとユウの関係とか。
Bぶっちゃけアルクさんはすぐ味方になるんだな。とか。)
著しい興ざめになります。
ばれたばれないよりも、どうにも無頓着であるあたりが。
Bにかんしてはノリで展開は読めるけれど、それが戦闘メッセから読めてはいけないと思います。
既存の版権物の台詞のパッチワークやってなんとか形にしてるんなら話は別だとしても、オリジナルなんですよ? 全て貴方の筆次第なんですよ?
……だったら!
説明:
〜
SRCはTV・アニメの二次創作が用意に出来るツールです。
種々の開発サイトは主に「それ用」に立ちあがっているわけですし。
でも、このシナリオはオリジナルです。つまり原作者も自分なので、原作者の意向とか、原作でこんな台詞があった。などとは意識しなくてよいのです。
原作から剥ぎ取られて、貴方のシナリオ上に乗ったキャラクター達は、原作との兼ね合いで。
「この状況・キャラにはこの台詞だろう。」というイメージング重視の台詞付けを行わなくてはならない場合もあります。
貴方の物語の上で多少台詞がツギハギになろうとも、です。
けれどもこれはオリシナリオ。
全て貴方の脳みそから出ている言葉で綴る物語。ツギハギする必要がどこにもありません。
台詞とシナリオ内容が矛盾するなら、言葉を出しなおすのもありですから。
〜
戦闘メッセとシナリオ内容との整合はもっと煮詰めて欲しいところですね(半泣きで訴えるように)
まあ、メッセの出る出ないは確率でもあるんですが。
このシナリオは、ちょくちょくSRC日記業界で出るんで、それに影響されてDL数かなりあるんじゃないかなーと思います。
だから、プレイヤーの数も多いと思います。
で疑問なんですが、こんなこと誰も気にしないんでしょうか。
むしろこんなミスは電光石火で直ってていいと思うんですが。なにかのミスリードかと疑いました。
プレイヤーにとって、この物語はユウとアルクの物語であり、他のキャラはあくまで引き立て役である。
前半のeveの半分以上はユウとアルクのかけ合いで占められており、4話初登場のロウ、7話初登場のクノーは、ユウとアルクの会話の軌道修正という役割しか持っていない。
この、ユウとアルクの夫婦漫才であるが、理詰め(という表現は不適切かもしれないが)で相手を追い込む様子を軽妙なテンポで描いており、好みはあろうが、やはりおもしろい。同じ作者のシナリオである「夢の狭間」でもこれは継承されており、作者の節回しと受け取っていいだろう。
ただ、この理詰め漫才は、毎話々々同じようなやりとりであり、理詰めである故にくどいので、何話も繰り返されると飽きてしまう。「これがいいんじゃないか」と主張する方も少なからずおられるとは思うので、繰り返し夫婦漫才に関しては、ここでは百歩譲って好みということにしておく。
問題は、理詰めで追い込むやり方が、ユウとアルク以外にも、ほぼ全般に適用されていることにある。
後半になり、メインふたりの会話の割合が減るにつれ、理詰めはただの婉曲表現となり、修飾過多となり、結果、薄く引き延ばされたわけのわからぬ抽象論を長々と見せられるようになる。
プレイヤーとしては、メインふたりが不在であるため、会話への思い入れもない。読んでどこで心理が動いたかわからない始末である。
象徴的なのは、12話の説得イベント、13話のサリサだ。
12話の説得イベントにおいてユウは、いままで積み重ねてきたふたりの関係にかかわる会話をせず、ただマリスについて想像で述べ続けた。ユウとアルクの関係性が、ふたりのいた時間の長さ(=プレイ時間)に支えられたものでしかなく、説得の契機となるドラマに欠けていたことも示している。
13話では、サリサが唐突に登場する。キャラクタにおいてアルクと同質でありながら、作品内で培ってきた時間がないという意味において、サリサはアルクと対極にあるキャラである。仲間たちとの関係性で乗り越えるべき話数であるのに、唐突に出てきた都合のいいヒロインによってロウの葛藤はあっけなく解決してしまう。
メイン以外のキャラの会話についてもいろいろ言いたいことがあるのだけど、うまく文章にできないので、ここで筆を置くこととする。
さて、このシナリオの雰囲気をひとことであらわすとすれば、ガンガンっぽい、ではないだろうか。
私がそう感じたのはこのシナリオをはじめて見たときのことだけれど、後に作者がガンガンという雑誌に強く影響を受けているという裏付けは取れてまあ、そのまんまだな、と感じたわけで。
つまり、それくらいエニックス社のガンガンという雑誌っぽい雰囲気で、全体的にいって、私はガンガンの作品が苦手だったりする。
そのことを、特にあの雑誌特有のギャグについての私のネガティブな意見を頭にいれた上で、以下に各レビュアーの意見について私なりの補足を読んでもらいたい。
えすたま氏が指摘しているような世界観におけるリアリティの欠如は、私の偏見かもしれないが、このガンガンっぽさ、ガンガンの漫画のデッドコピーであることに起因しているように思える。
実際のところ、箱庭世界についての解釈も、ちょっとした小道具でなんとかなる範囲ではあるので、複数の人が指摘しているように、はっきりと異世界である、という雰囲気をつくれていないのは力不足というところ。
とはいえ、これまで私がプレイしたSRCシナリオで、こういった異世界の雰囲気づくりに長けたシナリオが寡聞にしてひとつもない。このあたりはSRCの未成熟さ、次の段階へのステップアップとして、今後のシナリオの教訓にして欲しいと思う。
最後までプレイした全員の意見がほぼ揃っていることからもわかるように、このシナリオの欠点のひとつは、後半における唐突さ、特に12話以降に登場するキャラクターが、あくまでアルクとユウの2人のお話、とする場合に極めて中途半端な扱いをされていることだろう。
とにかくまず完結させることを優先しつつ、出したいキャラクターを全部出そうとした結果なのだと思う。
ここに限っては、お話の完成度よりもやりたいことを優先して失敗、結果崩壊して完結しなかった、いくつものシナリオが陥った罠をギリギリで回避した根性を誉めたい。なんせ、完結するってとてもとても体力がいる仕事なのだ。
とはいえ前述の欠点が欠点であることは確か。現在連載中のシナリオ作者は、この誘惑を前によくよく自戒すべきだ。
いいまわし、かけあいについて。
私が一番ひっかかった部分がここで、また同時に多くのプレイヤーが惹かれる部分でもあるという極めて微妙な場所だ。
ここについてはさらっと流してしまいたいところだけれど、天羽碧氏が指摘している通り、それがアルクとユウだけでなく全てのキャラクターに同じように使われてしまっているのは問題だ。
結局のところキャラクターなんて作者の人格の切り売りにしかすぎないわけだけれど、そう自覚しつつ、手を変え品を変え、キャラクターを生かす努力をするべきだろう。ま、これもSRCシナリオ全体の問題でもある。
結局のところ、このシナリオの欠点は、このシナリオ以後のオリジナルシナリオ隆盛の現在においても改善されていない。
いくつものデッドコピーを生み出した功罪はともかく、それだけの影響をこのシナリオが与えたというのは事実だろう。
何故かといえば、しっかりとアルクとユウの物語として一本筋が通っていて、面白いストーリーとして完結しているからであり、以後のシナリオの指標になっておかしくないだけの完成度であるからだ。
ならばこそ、欠点は欠点として認識し、これを超える長編オリキャラシナリオを待ち望みたい。
ま、それは風雲再起不能氏かもしれないけれど。
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